新◆幕末新撰組12日目 ~恋い慕う~

こんにちは。

今日から、土方さんと一つ屋根の下の生活がはじまります。ドキドキです。

出来れば、ふたりきりが良いのですが、まぁ、そこは贅沢は言えませんもんねww

 

恋い慕う


話し合いからほどなくして松本が京を去り、宇佐木が新撰組の新しい屯所へと移り住んで半月が経った。

巡察帰りらしい土方と、角を曲がった所で鉢合わせになる。

土方はちらりとこちらを見ただけで、足を止める事もなく行ってしまう。

(・・・まるで、出会ったばかりの頃の土方さんに戻ってしまったみたい

いつからか、ふとしたやり取りでそう感じるようになっていた。

(なんだか壁を作られてしまったみたいで、寂しい・・・

懸想

「お前、もしかして土方さんに懸想してんの?」

疼くような胸の鈍痛に心をざわめかせていると、突然声をかけられる。

(・・・懸想?)

現代ではあまり使われない言葉だ。一瞬、意味を考える。・・・それはつまり、恋い慕うという事。

私が土方さんを好きなのか・・・ってこと?

どきんと大きく鼓動が弾んだ。思考が停止する。

「図星かよ」

「ち・・・違いますっ!」

はっと我に返って否定する。

「ま、どっちでもいいけど。一応忠告しといてやるよ。土方さんはやめといた方がいいぜ?どうせあの人、どんな女にも本気になんてならねえから

 

鋼の意志


宇佐木が不動堂村の屯所で暮らすようになってから一月ほど過ぎた頃、近藤が遠方出張のためしばらく留守にしていた。

「沖田さん、どうされたんですか?」

沖田が中に入るわけでもなく、広間の前に佇んでいる。

「とうとう四人目が出たから見学。さっすが鬼副長。相変わらず容赦ねぇな」

嫌な予感がする。

「決まってんだろ。また隊規違反で切腹させられんだよ」

沖田は事もなげに言うが、思わず手を握りしめる。

『局中法度』と呼ばれる新撰組の隊規は、一度でも破れば即切腹と言う厳しいものだ。

直後、広間の襖が開く。

「土方副長っ!どうか・・・どうか許してください!」

「黙れ。新撰組隊士ならいつでも死ぬ覚悟はできているはずだ」

切腹

「明朝、切腹を命じる

少年のような隊士が、絶望的な表情でその場に座り込む。

(まだあんなに若いのに。何とか、何とか助けてあげられないの・・・?

ふいに、土方の視線がこちらに向く。その凍りつくような両目に見据えられ、ぞくりとする。

まるで心の奥底まで、見透かされてしまったような感覚に陥った。

(わかってる。隊士でもない私が口を出す権利なんてないって。わかってるけど・・・)

やるせない気持ちに苛まれて目を逸らした。

――――――――――――

ずいぶんと長い間一人で町中を彷徨ってから、人知れず長い息を吐き出す。

考えたところで答えなど出るはずもないと顔を上げると、雑踏の中に土方の姿を見つけた。

(どこへ・・・?)

辿りついた寺の物陰からそっと様子を伺うと、土方は墓石を見つめて静かに佇んでいる。

「そろそろ出て来たらどうだ?」

(気づかれてた・・・)

「誰のお墓なんですか?」

しばしの沈黙の後、意を決して聞いてみる。

新撰組隊士だ。任務中に殉死した者、隊規に背いて切腹した者、粛清された者、全て、この下に眠っている」

「一緒にですか・・・?」

同じ志

「どんな理由でこの世を去ったにせよ、一度は同じ志の下に集った仲間だからな」

(どうしてそんな単純なことに気がつかなかったんだろう・・・土方さんだって、仲間を死なせることを何とも思ってないわけがない・・・)

「ごめんなさい、私・・・」

言葉を詰まらせる。

自分の気持ちだけでしか考えていなかったのだと思い知らされて、心の底から恥ずかしかった。

「女のお前に理解しろとは言わない、受け入れられるとも思っていない。だが新撰組の近くに身を置くつもりなら、覚悟はしておけ。それができないなら、すぐに松本先生の元に帰してやる」

顔を上げると、強く真っ直ぐな瞳に見つめられていた。

そこに宿るのは、決して折れる事のない鋼の意志

(土方さんは、新撰組のためにあえてになったんだ。本当は優しい人なのに・・・

自ら鬼に徹する事で、土方の背負う業や苦しみは計り知れない。

(もし土方さんの心に寄り添えるなら、少しでも重荷を軽くできるような、そんな存在になれればいいのに・・・)

そう願っていると気づいた途端、とくんと鼓動が弾む

(あ・・・私、やっぱり・・・)

 

寂しいと感じる心


近藤が京に戻ると、今度は土方が隊士募集のため江戸に下った。

今回は二ヶ月に及ぶ長期滞在だと聞いている。

(こんなに長い間会えないのは初めて・・・)

寂しいと感じている心を否定する事はない。土方への想いに気づいてしまったからだ。

(最初はあんなに怖がっていたのに)

苦笑が零れる。

(ぼうっとしてないで、私も仕事しなくちゃ・・・)

そう思って立ち上がりかけ、ぎくりとする。

右手が半分ほどまで白く霞んでいた。

(そんな、ずっと平気だったのに前よりひどくなってる・・・)

嫌な汗が背筋を伝う。

(とにかく、何とか隠さなきゃ・・・)

その日から、苦肉の策として右手にさらしを巻く日々が始まった。

――――――――――――

秋の気配を感じ始めたある日、土方がようやく戻って来た。

その姿を見た途端、胸が高鳴り始める。

「お帰りなさい、お元気そうで良かったです」

元気じゃなさそう

「・・・お前は、元気じゃなさそうだな。怪我でもしたのか?」

土方の視線が、さらしを巻いた右手に向けられている。

「ちょっと庭木の枝に引っかけてしまって」

「手首までさらしで覆わなければならない程の怪我をちょっととは、お前の強がりは相変わらずらしい」

その洞察力の鋭さにひやりとする。

 

右手


(やっぱり不自然だったよね、これ・・・)

その夜。部屋に戻る途中でふと足を止め、右手を見つめる。

「おい」

突然肩に触れられた事に驚いて、一瞬遅れて振り返る。

「ひ、土方さん、驚かせな――」

「・・・やはりな。その右手、本当は怪我などしていないだろう?」

気づけば肩に置かれた土方の手を、右手でしっかりと掴んでいた。

嘘をつく

「どうしてわざわざ、そんな嘘をつく必要がある?」

「”ごめんなさい”・・・」

隠しきれないと直感し、素直に謝る。

「・・・驚かないでくださいね」

意を決して、するするとさらしを解いていく。

「・・・何ともないようだが?」

さらしを全て解き終えた右手を一目見て、土方は眉根を寄せる。

「貸してみろ」

 

恋心


宇佐木ちゃんが、とうとう自分の恋心に気づいちゃいましたね。いやいや、けっこうバレバレでしたけどww

宇佐木ちゃんは、この恋心を抱き続けるのか、諦めるのか、伝えるのか、伝えないのか。。気になります。そしてこういった恋愛の葛藤が、すごく好きです。切なくなりますww

これから、この恋の行方は、どうなるのでしょうか?

なんでもお見通しの土方さんには、既に気づかれているような気もいたしますが・・・。宇佐木ちゃん、頑張って!

Ranking

Category

Tag Cloud

Archive