イケメン夜曲◆ロミオと秘密のジュリエット8日目 ~上出来~

こんにちは。

やっとカジノ潜入の目的がハッキリしました。

これからは、これまで以上に本物の令嬢のようになれるように頑張る所存であります。

 

上出来


ラッド様が語ってくれた話の内容に、私はまだ衝撃を受けていた。

奪われた機関車の設計図が、カジノに隠されていて・・・それがないと、ラッド様の鉄道会社が倒産してしまう・・・

ラッド様は少し申し訳なさそうに微笑んだ

責任重大だな・・・)

私の肩に、ラッド様がそっと手を乗せる。

救世主

「本当にありがとう。ウサギは、俺にとっての救世主だ」

――――――――――――

翌朝――

いつも以上に気合を入れ、私はティーサロンに出勤した。

支度を進めていると、ドアベルがカランとなった。

(アレク・・・・・・今日も不機嫌そう)

アレクは顔をしかめたまま、備品のチェックを始めている。

「・・・・・・アレクって、朝が苦手なの?」

「・・・見りゃ分かんだろうが」

「なんだ・・・・・・そうだったの」

(あれ・・・・・・。どうして今、私・・・ちょっと、ほっとしてるんだろう)

「なんでお前が嬉しそうなんだ」

微笑んだ私を見て、アレクも怪訝そうな目で見ている。

嫌われてなくて安心するのは・・・・・・別に普通だよね

それから――いつものように『ブルーベル』の忙しい一日が始まった。

アレクに教わったことを思い返しながら、丁寧に・・・ただし急いで、紅茶の準備をする。

(今回は、ちょっと自信があるんだけど・・・どうかな)

私は緊張しながら、カウンター越しにアレクへトレイを手渡した。

アレクはトレイを片手で受け、香りを確認すると・・・

上出来

ん、上出来

アレクの口元にふっと笑みが浮かび、開いている手が私の方へと伸びてくる。

「・・・・・・っ」

大きな手のひらが、私の頭をくしゃっと撫でた

(今・・・『上出来』って言ったよね?)

この上なくそっけない一言だったのに、じわっと胸が熱くなっていた

(私、アレクを見返したいって思ってたけど・・・そうじゃなかったみたいだ)

優雅な仕草で紅茶をサーブしているアレクを、そっと盗み見る。

私はアレクに・・・認めてもらいたかったんだ

 

落ち着かない


その日はいつも以上に混み――、『ブルーベル』が閉店した時にはすっかり陽が落ちていた。

「これで、洗いものは終わったよ」

(片付けの最後までいたのは、初めてだな。いつもは暗くなる前に帰らされるし)

「じゃ、帰るか」

帰るか

(帰るか、って・・・)

「”アレクももう帰るの?”」

「見りゃわかんだろ」

アレクがドアを開けながら、私を待っている。急いで荷物をまとめて、私はドアへと駆け寄った。

帰り道、リングランドの夜の街並みを私はアレクと並んで歩いていた。

「アレク・・・今日は、ありがとう」

「・・・あ? 何が」

「昼間、『上出来』だって褒めてくれたでしょう?アレクに、ちょっとは同僚として認めてもらえた気がしたから」

「単に、お前が頑張った結果だろ」

そっけなく言われたのにまた、じんわり胸が熱くなる

「やっぱり・・・・・・ありがとう。これからも頑張るから、よろしくね」

笑みをこぼしながら、私はアレクを見上げた。

落ち着かない

「・・・・・・っ」

なぜか・・・アレクが困ったように眉をひそめている。

「私、なんか変なこと言った?」

「変なことっつーか・・・・・・お前は、笑うな

「な、なんで・・・?」

・・・落ち着かねえんだよ、なんか」

思わず足を止めた私を置いて、アレクは先に歩いていってしまう。

 

力強い腕


アレクの背中を追い掛けながら、言い合いをしていると・・・

「あ」

「わ・・・っ」

突然立ち止まったアレクの背中に、鼻をぶつけてしまった。

アレクはすぐにまた私を置いて歩き出し、メインストリートを横断しようとしている老婦人の元へ駆け寄った。

「荷物貸せ、ばーさん」

恐縮する老婦人から、彼女が抱えていた大荷物をアレクがひょいと奪う。

(そういうことか・・・)

私もアレクを追い、老婦人の元へ駆け寄った。

「よければ、お手伝いさせて下さい」

私が差し出した腕に手を添えて、彼女は笑顔を返してくれた。

「もしかして、お孫さんへのプレゼントですか?」

「ええ、5歳の誕生日でねえ」

「ばーさん、ガキの頃から甘やかすとろくな大人に育たねーぞ」

老婦人は気にした様子もなく、楽しげに笑っていた

「本当に家まで持ってかなくていいのかよ?」

通りを渡り終えると、アレクが老婦人に荷物を返した。

「家はそこの角だから、大丈夫だよ。ありがとうね」

わずかにアレクも笑顔を見せて、すぐに踵を返す。

慌ただしく老婦人に頭を下げ、アレクを追いかけようとしたその時――

ドンッ――!

通りすがりの誰かとぶつかり、老婦人の荷物が通りの中央へ吹き飛ぶのが見えた。

「・・・ウサギ?」

考えるより先に身体が動いて、私はメインストリートに飛び出していた。

プレゼントを拾い上げたその時――

「・・・・・・!!」

スピードを上げ、通りを馬車が走り込んで来る。

(っ・・・足が、動かない・・・・・・)

ウサギ!

「ウサギ!」

どんっと横から体当たりをされるような衝撃に襲われ――

「・・・・・・アレク・・・・・・?」

アレクに抱き込まれるようにして、地面に倒れこんだことに気付いた瞬間、馬車がすぐそばを駆け去って行った。

(助かっ・・・・・・た・・・・・・?)

「お前・・・・・・ふざけんなよ」

これほど低く静かなアレクの声は、今まで聞いたことがない。

「ごめん、なさい・・・・・・」

もし一瞬でも、アレクが引き寄せてくれるのが遅れていたら・・・

(私だけじゃなく・・・アレクまで馬車に轢かれてしまう所だったんだ・・・)

そう思うとまた、身体の震えがぶり返してきた。

アレクは私をじっと見つめ、深く息をつく。

「・・・・・・ほんっとに、めんどくせえな」

不意に、私の身体を力強い腕がしっかりと包み込んだ

(・・・・・・え・・・・・・?)

 

優しくないけど優しい人


アレクのように、ぶっきらぼうな人こそ、心が優しかったり、親切だったりするんですよねえ。

正直者だから、ぶっきらぼうなのかな?取り繕うというか、上っ面だけ、という考えがないのかも。。と、ふと思いました。

そして、”優しい”って何だろう?と、そこまで考えちゃいまして、ちと調べてみると、”思いやりがある”とか”すなお”とからしいのです。

それなら、両方アレクに当てはまるな、と思ったら・・・、”刺激が少ない”というのがありましたので、いかんせんこちらは当てはまりません。

ゆえに、やっぱりアレクは、”優しくないけど優しい人”だな、と。

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